「息が足りない…!フルートと呼吸のちょっといい話」

レッスン

息が苦しいのは、あなたのせいじゃありません

「すぐに息が苦しくなる…」
「音をもっと伸ばしたいのに、どうしても途中で息が切れてしまう」
「吸ってるつもりなのに、すぐ足りなくなる気がする」

そんなお声を、レッスンでよく耳にします。
そしてそれに対して「自分の体力がないせいだ」と感じてしまう方も多いです。

でも実は、これは練習不足でも、年齢のせいでもなく、
「ちょっとした体の使い方」と「呼吸の意識の向け方」で変わることがとても多いんです。

息は“たくさん吸う”より、“ちゃんと出す”が先

私が学生の頃、先生に「まずはしっかり息を吐いてごらん」と言われたことがあります。
当時の私は、うまく吹けないと「もっと吸わなきゃ」と思い込んでいたので、とても印象に残っています。

実際、たくさん吸おうとするあまり体がかたくなってしまっていたのだと、後から気づきました。
息は「入れる」よりも、まず「出す」ことから始まる。
しっかり吐ききれば、自然に体は吸う準備をしてくれる、そんな体の仕組みがあります。

息を出す 呼吸法

音が出る仕組みを知って、見えてきたこと

私の場合、音の鳴る仕組みを学んだことで、息の方向や当たり方を意識するきっかけになりました。
それまではただ“なんとなく音が出ている”だけだったように思います。

私にとってより大きかったのは、自分に合ったアンブシュアを探る中で、これまで使えていなかった筋肉を少しずつ鍛えたことです。
必要な筋肉が働くことで、余計な力が抜け、自然に脱力できる感覚が育ってきたように思います。
頬骨をやや上げる意識をもつと、息がよりスムーズに流れ、響きやすさが感じられるようになりました。
もちろん、これだけでアンブシュアが整うわけではありませんが、
自分にとっては脱力感や響きを探るうえで、大きなヒントのひとつになりました。

姿勢って、ただ“まっすぐ立つ”ことだと思っていませんか?

フルートは「口で吹く楽器」と思われがちですが、
実は音の土台は、ずっと身体の深いところにあるように感じています。

立ち方や体の重心、足の裏の感覚、そして「丹田(たんでん)」と呼ばれるおへその少し下あたり。
そこにそっと意識をもつことで、自然と余計な力が抜け、呼吸も音もゆったりと流れやすくなります。

私は、緊張して力が入りそうなときほど、
身体の力を抜いて、意識を丹田(おへその少し下)に落ち着かせるようにしています。
すると、重心が下がり、呼吸も自然と安定しやすくなるように感じます。
この状態で構えると、緊張していても安心して音を出すことができる気がしています。

フルートは金属でできた楽器ですが、音を響かせるのは“わたしたちの身体”です。
だからこそ、身体を整えることは、音を整えること。
楽器を吹く前の静かな準備の時間も、音楽の一部なのだと思います。

丹田の位置

息が“足りない”のではなく、“もれている”かもしれない

「息が足りない」と感じるとき、
実際には「吸えない」ことよりも、「息がうまく使えていない」ことが多いように思います。
音になっていない息があるのかもしれません。

たとえば…
・息を無駄にたくさん使ってしまっている
・アンブシュアが不安定で、息の方向が定まらない
・フレーズの切れ目がつかめず、苦しいまま吹き続けてしまっている

こうした理由で「息がすぐ足りなくなる」と感じる方も多いです。
だからこそ、音楽的なフレーズの流れや、体の感覚にそっと目を向けてみることが大切なんですね。

呼吸は、技術より“感覚”で変わっていく

呼吸のコツは、どこか「技術」よりも「感覚」に近いところにあります。
思い切り吸う・吐くというより、「空気がどう流れていくか」を体の中で感じること。

レッスンでも「息を指先まで流すイメージで」「言葉を語るように吹いてみましょう」
そんな一言で、音がふわっと変化することもあります。

言葉やイメージが身体の使い方に影響を与えるのは、音楽の不思議で面白いところだと思います。

フルート演奏

息が整うと、音楽も整う

呼吸が整うと、音色が安定し、音色が安定すると気持ちも落ち着いてきます。
そして気持ちが落ち着いてくると、音楽の流れも自然になります。

息がつながるということは、音がつながること。
音がつながるということは、気持ちが流れていくということ。

呼吸は、心と音をつなぐ架け橋のようなものだと思います。

フルートは、息ひとつで音の表情が変わる楽器。まるで歌うように、心の動きがそのまま音になりやすい。そんなところも、フルートの大きな魅力です。

おわりに|うまく吸えない日は、深呼吸から

フルートは「良い音を出そう」と思えば思うほど、
つい頑張りすぎてしまうこともあります。

そんなときこそ、一度息を「はぁ〜」と深く吐き出して、
まず身体をゆるめてみてください。

音楽は「がんばり」でできているのではなく、
「流れ」や「感覚」から生まれてくるものだと思っています。

できる・できないで悩む前に、呼吸と仲良くなる時間を…
そんなふうにフルートと向き合うことが、もっと楽しく、やさしい時間になりますように。

ト音記号 安心

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